池谷裕二のお薦めクラシック盤

イ・ムジチの四季、リヒターのマタイ、グールドのゴ変、カザルスの無伴奏、ワルターの田園、フルヴェンの第九、ウラッハのモツクラ、バックハウスのベトソナ、ミュンシュの幻想、ハイフェッツのメンコン、ルービンシュタインのマズルカ、Fディースカウの若人の歌、カラスのノルマ、デ・サバタのトスカ ―― いわゆる歴史的名盤はもう飽きたので新たな名盤が欲しい。そんな方に池谷の好きな演奏を紹介します。

私の選考基準は主に3つです。
 1.楽曲が本来持つ魅力を強い個性で無根拠に歪曲化していないこと
 2.楽譜を眺めながら聴いても納得できる丹念で精緻な演奏(注1)
 3.優秀な録音(できれば1990年以降の収録)
一言でいえば、作曲者本人に「聴いてみて!」と言いたくなるような演奏です。

選定にあたっては、奇をてらって「隠れた名盤」を衒言するのでなく、定評のある演奏を取り上げるように心がけました。

まだまだ名曲はたくさんありますが、比較対象となる手持ちCDが少ない曲や、共感できる演奏に出会っていない曲はリストしていません。今後も追加してゆきます。




モンテヴェルディ:聖母マリアの夕べの祈り
アレッサンドリーニ指揮&コンチェルト・イタリアーノ(hmvamazonnaxos)・・・大好きな曲なのでどんな演奏でも聴けますが一つ選ぶとしたら本盤でしょうか。演奏技術ならばマクリーシュクイケンを取りたいところ。普段よく聴くのはパロットマレット、そしてヘレヴェッヘの新板。

ペルゴレージ:スターバト・マーテル
ヤーコプス指揮&コンチェルト・ヴォカーレ(naxos)・・・歌と伴奏が澄んだ官能感を醸します。カークビーが歌うホグウッド盤、フレーニとベルガンサが歌うグラチス盤も推薦

コレルリ:全集
ベルダー(amazon)・・・中庸の美。マンゼは活き活きとした魅力的を放つ

ヴィヴァルディ:四季
カルミニョーラ指揮&ヴェニス・バロック・オーケストラ(amazon)・・・新鮮味と安定感の調和が見事。ヴァイオリンも朗らか。随所に工夫がありながらも中庸の美を貫くポッジャー。鮮度の高いビオンディの旧版新版、DVD音源ですが精緻で瑞々しいフィッシャーもお勧め。

テレマン:食卓の音楽
ムジカ・アンフィオン(amazon)・・・まろやかな美音と中庸スタイルが透徹し、燻製のような味わい

バッハ:ブランデンブルク協奏曲
アントニーニ指揮&イル・ジャルディーノ・アルモニコ(hmvamazon)・・・快適な躍動感。ピノックの新盤も双璧。渋い音質のエガーフライブルクベルダーも好み。現代楽器ではシャイー

バッハ:ゴールドベルク変奏曲
シュタイアー(amazon)・・・うっとりするようなハープシコードの音色。ピアノ盤は悩みどころですが、やはりペライアシフあたりが定番だと思います。

バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタとパルティータ
フィッシャー(naxos)・・・求道的なムローヴァ、機能性と情感を兼備したファウスト、軽妙流麗なイブラギモヴァ、明朗闊達なポッジャー、淡麗な技巧で魅せるカーラーなど、多くの名盤がありますが、肉感的にバッハを表現した本盤に一票。

バッハ:無伴奏チェロ組曲
ベルガー(naxos)・・・老齢バッハの晦渋な音楽でなく、まぎれもなく青年期の軽やかな「舞曲」であることを再認識させてくれる演奏。同じ意味でイッサーリスケラスシーフェンツォイデンもよく聴きます。

バッハ:パルティータ
ピノック(naxos)・・・個性を抑えて曲を立たせるという個性曲。ピアノではペライア

バッハ:マタイ受難曲
マクリーシュ指揮&ガブリエリ・コンソート&プレイヤーズ(amazon)・・・曲の美しさをストレートに伝える演奏。合唱のうまさではヘレヴェッヘ

バッハ:ミサ曲ロ短調
ヘンゲルブロック&フライブルク・バロック管弦楽団(hmvamazon)・・・高度な合唱力だからこそ可能な圧倒的な透明感。

ハイドン:後期交響曲
ノリントン指揮&シュトゥットガルト放送交響楽団(naxos)・・・とにかく楽しい。個性が立つがミンコフスキも実に楽しいです。

モーツァルト:交響曲
ピノック指揮&イングリッシュ・コンサート(amazon)・・・軽妙でいて精巧。

モーツァルト:ピアノ協奏曲
ペライア&イギリス室内管弦楽団(amazon)・・・古い録音ながら極上のシャンパンのような味わい。新しい録音ではビルソンが絶品。

モーツァルト:ピアノソナタ
ヘブラー(hmvamazon)・・・何度も聴きたくなる滋味。ピリスもよく聴きます。

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ
イブラギモヴァ&ティベルギアン(amazon)・・・二人の息がピッタリで聴き手をウキウキとさせる。古楽器ではファウスト&メルニコフ

モーツァルト:レクイエム
ラバディ指揮&レ・ヴィオロン・デュ・ロワ(naxos)・・・柔と剛、情と技のバランスが見事。クルレンツィスもお薦め。

ベートーヴェン:交響曲
クリヴィヌ指揮&ラ・シャンブル・フィルハーモニー(hmvamazonnaxos)・・・アーノンクールインマゼールガーディナーP.ヤルヴィなど名盤が多く選定に苦慮しますが、音質の良さも含めたら本盤でしょうか。耳をくすぐるような木管の音色が心地よい。モダン管弦楽ではシャイーがいぶし銀の爽演。

ベートーヴェン:ピアノソナタ
ルイス(hmvamazonnaxosなど)・・・全体の統一感と細部へのこだわり、表情付けと演奏技術、そして音の艶 ―― すべてが高度なレベルにあります。安定感と説得力ではボミエオールソンも比肩。シフは独自の世界観が魅力。

シューベルト:歌曲
ボストリッジ(naxosなど)・・・彼の美声は何にも替えがたいです。プレガルディエンも双璧。

ベルリオーズ:幻想交響曲
ミンコフスキ指揮&ルーヴル宮音楽隊&マーラー室内管弦楽団(naxos)・・・ロートと迷いつつ、ヴァイオリンの両翼配置と録音の良さで本盤。

ショパン:練習曲
ペライアamazon)・・・現代ピアノの耽美性を素直に引き出しています。ロルティも双璧。

ショパン:ノクターン
チッコリーニ(amazon)・・・クリスタルのような音色。艶やかなメジューエワ、峻厳なオールソン、晦渋なアラウの演奏も好きです。

シューマン:交響曲
ガーディナー指揮&オルケストル・レヴォルショネール・エ・ロマンティーク(amazon)・・・P.ヤルヴィが肉薄しつつも、バランスのよさで本番に軍配。

シューマン:ピアノ曲
アムラン(hmvamazon)・・・揃った音の粒が心地よい。ル・サージュも安定感の高い音楽作り。

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ
カヴァコス&ユジャ・ワン(amazon)・・・しっとりとした若々しさの裏に秘められた情熱。イブラギモヴァ&ティベルギアンも抑制が効いた魅力を放つ

フォーレ:レクイエム
ヘレヴェッヘ指揮&アンサンブル・ ミュジック・オブリク(amazon)・・・圧倒的な透明感。大編成で再録した新盤も推薦。

シベリウス:交響曲
ベルグルンド指揮&ヨーロッパ室内管弦楽団(amazon)・・・鋭利な氷刀のよう。いぶし銀のブロムシュテット&SF響も見事。

マーラー:交響曲
ベルティーニ指揮&ケルン放送交響楽団(hmvamazonnaxos)・・・個人的にはMTTを挙げたいところですが、左盤を推すほうが常套だと思います。10番はギーレン

ドビュッシー:管弦楽曲
インマゼール指揮&アニマ・エテルナ(naxos)・・・ロトの名演を含め、この作曲家の響きは本盤のようなノンビブラート奏法でないと活かされません。モダン楽器ではふくよかなガッティが求心力が高いです。

ドビュッシー:ピアノ曲
バヴゼamazon)・・・艷やかな音質で細部にまで配慮の行き届いた演奏。渋いピアノ音色がかえって色彩豊かカッサールも超名盤。

ラヴェル:ピアノ曲
オズボーン(hmv)・・・均整の美。完璧な技術。デュモンも双璧。ロルティは同じ路線ながらより瑞々しい世界を繰り広げます。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲
ハフ&リットン&ダラス交響楽団(hmvamazon)・・・冷徹な視線で曲自体の脚線美を浮き彫りにします。ロシア風味は少なくあっさりした演奏に思えますが、作曲者本人の自作自演は実はこれに近い。ライブ録音。

バルトーク:ピアノ協奏曲
バヴゼ&ノセダ指揮&BBCフィル(amazon)・・・響きの大切さを再認識させられる名演。

バルトーク:ピアノ曲
ティベルギアン(amazon)・・・現代的な安定感。より伝統的なスタイルはシャンドール

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲
ブロンフマン&メータ指揮&イスラエルPO(amazon)・・・安定した風格。綺羅びやかな音色。幻惑的なソノリティを見せるバヴゼも絶品。

ストラヴィンスキー:春の祭典
ロト指揮&ラ・シャンブル(amazon)・・・説得力のある個性と熱狂のバランスがよい。古楽器の演奏ではクルレンツィスが双璧。濃厚なロマンティシズムのカンブルラン、爽快なアンサンブルのMTTもよく聴きます。

ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ
メルニコフ(amazon)・・・細やかな感性と様式美


注1 2000曲以上の楽譜をiPadに入れて普段から持ち歩いています。楽譜はIMSLPScorSerからダウンロードしています。

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